ウルシ花粉の識別

現生ウルシ属5種(Toxicodendron)とヌルデ(Rhus javanica)花粉の分類

結論:ウルシ花粉は他のウルシ属やヌルデと識別できる

 ウルシ属5種(ハゼノキ・ヤマウルシ・ツタウルシ・ヤマハゼ・ウルシ)とヌルデ花粉の彫紋の観察と計測値から3タイプに区別された。すなわち,1)彫紋が線状紋ないし不明瞭な網状紋タイプ,2)溝周辺の彫紋にほぼ変化がなく網目の形状と大きさが類似したタイプ,3)溝周辺で彫紋が細かく浅くなり不明瞭な網状紋ないし線状紋からなるタイプである。1)のタイプにはヌルデ,2)にはウルシ,3)にはツタウルシ,ハゼノキ,ヤマハゼ,ヤマウルシが属する。3)のタイプについてはヤマウルシ類と仮称した(吉川,2006)。                       

吉川昌伸.2006.ウルシ花粉の同定と青森県における縄文時代前期頃の産況.植生史研究 第14巻1号,p.15-27.

ウルシ花粉の同定(吉川,2006)の補足説明 

 ウルシの網目は、局方向でほとんど変化しない、または僅かに粗くなるものの他種ほど顕著でない。他種に比べ網目は全体的に一様である。網目は極方向に線状に配列するものから、線状にほとんど配列しないタイプまである。ウルシの彫紋は個体間の変異が大きいものの、溝間で赤道付近の網目は溝まで比較的均質で形成される。ツタウルシに全体的に網目が同様で溝の傍まであるように見えるものがあるが、その場合でも赤道付近の溝傍の網目は細粒化、あるいは不明瞭になる。溝からの最初の彫紋が網目でない場合はウルシでない。     なお、識別には高分解能であるPlanApo100×の対物レンズによる観察が必要である。