カラマツは針葉樹の中で数少ない、落葉樹である。日本固有のカラマツは本州(宮城県の蔵山から石川県の白山)の冷温帯から亜寒帯に分布し、自生地は富士山や浅間山の山麓など本州中部の火山砂礫がごろごろした山岳地域である。
北限は宮城県蔵王山の馬ノ神岳(1551m)山頂付近であると言われてきたが、ここに生育する集団は分布域も形態も本州中部の集団とは大きく異なっていた。こうしたことから白石ほか(1996)はDNA分子マーカーを用いてカラマツ属の分類・系統学上の検討を行った。その結果、ザオウカラマツはニホンカラマツと大きな1クラスターを作るが、このクラスターは小さな2クラスターに分岐しており、ザオウカラマツはニホンカラマツの中でも特異的な分化を起こしていることがわかった(白石ほか、1996)。馬ノ神岳では現在約10本のザオウカラマツの自生が確認されているが減少の一途をたどっている。
かつて寒冷期だった約1.3〜2.5万年前頃、東北地方や関東地方にはカラマツ属が低地に分布していた。その球果の形態は変異がはげしく、現在サハリンなどに生育しているグイマツに近似するものと、日本のカラマツの形態をもつもの、そして両者の中間的な形態を持つものが存在していた。
参考文献
白石進・磯田圭哉.1996.東アジアに分布するカラマツ属植物のDNA分類・系統学的研究.ミニシンポジウム-「日本の亜寒帯性針
葉樹の時空分布の変遷と系統」.-講演要旨集.
花はあまり目立たない。雄花は枝先に黄色く短い柱状の花序をつける。雌花は楕円形で赤く小さい松ぽっくりの形をしている。
花粉は球形の無口型である。径は90μm前後と比較的大きな花粉である。外壁は外表層が発達する構造で、外壁表面は平滑ないし顆粒状紋である。向心局面に線状の肥厚部があり時に三つ又になる。
放射断面
接線断面
横断面
カラマツ花粉
花と花粉
木 材
自生のカラマツ林(浅間山)
ザオウカラマツ(馬ノ神岳)
ザオウカラマツ雌花
カラマツの材組織は、早材と晩材との差が明確で大きな垂直樹脂道がみられる。晩材部の仮道管は非常に厚壁である。接線断面では、放射組織は単列で高さが10〜20細胞、水平樹脂道がある(写真の中央)。放射断面では、放射組織の断面にトウヒ型の分野壁孔が1分野につき3-5個ある。