トチノキの果実には厚い果皮がある。果皮の表面はざらざらで、やや大きい丸い突起がまばらにあり、その間に小さい低い突起が分布する。果皮壁は柵状で空隙が多い。果実の中には種子のもとが3つあるが、完熟するのはそのうちの1個か2個の場合が多い。残りは栄養として吸収されてしまうか、未熟で小さいまま褐色になる。厚い果皮に守られた種子は秋に完熟すると乾燥して自然に落下し、果皮が3裂する。
引用文献
伊佐治久道・杉田久志. 1997. 「小動物による重力落下後のトチノキ種子の運搬」.日本生態学会誌.
47: 121-129.
トチノキ (果実・種子) Aesculus turbinata
種子は上下に少しつぶれた楕円球で、上半分は光沢のある黒褐色、下半分の着点はざらざらした淡褐色である。上下の境目に根芽が少し膨れるようにしてついている。平滑に見える上半部の種皮は顕微鏡で見ると大変細かい網目模様があり、この網目が流理状もしくは指紋状に配列する部分もある。薄い種皮壁は3層構造であるがそれぞれの細胞の配置が不規則なためクリのように縦に裂けることはなく、不定形に剥ける。
トチノキの種子散布は、従来重力散布によるとされていたが、主にアカネズミの仲間によって運搬され親木が生育している場所よりも上方に実生ができることがわかった(伊佐治・杉田,1997)。リスもネズミもトチノキの種子は食べることがわかっており、食害から免れるためといわれてきたトチノキの強いあくもかれらには役に立たないということである。したがって運良く食害を受けなかった種子が貯食行動により分布を拡大する。
種子表面(約40倍)
種皮の上下境目(約40倍)
化石トチノキ種子の表面(約40倍)
果実
種子
果実表面
果実の壁断面