トチノキは北海道南部から九州にかけての渓流沿いの肥沃地に生育する。現在は街路樹や庭木などに植栽されているが、昭和初期頃までは種子の粉がどんぐり粉よりも高値で取引され、穀類の不足を補っていた。縄文時代中期ごろにあく抜き技法が確立されたと推測され、縄文時代後期から晩期にかけて利用が急速に拡大したとみられる。材の利用はクリほどではないが、縄文時代には器や丸木舟などに利用された。
トチノキは大きな葉が掌状につくので、林の中でも大変目立つ樹である。夏になると、枝先に高さ30cmほどの円錐形の大きな花穂をつける。トチノキは虫媒花で、花は黄白色、花弁の中央と雄しべが赤く、虫にわかるよう目印にしている。虫は豊富な密を目当てに訪れる。
トチノキの花粉型は三溝孔型、極観は円形ないし亜円形、赤道観は長楕円形である。極軸は35-40μm、赤道径は21-25μm。外層の発芽口は溝型で極方向に長く伸び、赤道周辺では6μm前後で開く。溝内には細かな刺状突起が散在し、大きい突起は高さ約2μmである。内層の発芽口は孔型、ほぼ円形で5-6μm前後である。外壁は外表層が発達する構造で、外壁表面は流理状紋が指紋状に配列する。
トチノキの材組織は、道管が年輪の中にまばらに散在し、年輪界がはっきりしない「散孔材」で、放射細胞が単列で規則的に配列している。放射細胞が比較的同じ位置にそろうことが多いので、場合により板目と柾目に美しい波模様が現れる。
花粉(赤道観)
トチノキの花序
花 序
放射断面
接線断面
横断面
花と花粉
木 材